ことばと猫

30歳シングルライフを彩る読書日記

夏帆 / 村上春樹

 

夏帆 / 村上春樹 (新潮 創刊120周年記念特大号より)

 

 

春のみみずく朗読会の続き。

こちらの作品は、村上春樹さんがこの朗読会の日のために書き下ろした作品でした。

 

「タイトルは、夏帆 です。季節の夏に、船の帆と書いて、夏帆です」

と村上さんがおっしゃったときに、会場の雰囲気がぎゅっとひきしまって。

 

「だけど、夏帆は2月生まれです。夏帆の両親がなぜこの名前をつけたのかは、

私もわかりません。」とつづけておっしゃったときに、

ひきしまった雰囲気が一気にほぐれて、笑いが起きて。

 

そっかあ、物語の中の人たちは作者に生み出された存在ではあるけれど、

作者の手の届かない、生身の人間のように生きている部分があるんだなあと

なんだか不思議な気持ちになりました。

 

物語のテーマは、「顔・容姿」

 

自分の話をすると、

私の目はTHE一重で、可愛いや綺麗とはかけはなれている顔なのだけれども、

アイプチや二重に整形しようと思ったことは一度もない。

ソバカス肌で、小学生のころからほっぺたにそばかすや

いまとなっては肝斑が広がっているけれど、まあ、死にはしないしね、とそのくらい。

 

特別、大切に育てられたわけでもなく、自己肯定感が高いわけではないけれど、

自分の容姿についてあまり考えたことがない。

(ということを、この物語を聴いて読んで、初めて認識した。)

 

むかし、10代のころにはじめてつきあった人が

無類の一重好きで、歴代の元カノたちもみんな一重まぶた。

(つきあっていた人も、歴代の元カノたちも、バイト先の先輩だった。

いま思えば、喰われた感。)

ちなみに、当の本人はぱっちり二重。おい!

・・・それはおいといて、

人生ではじめて一重まぶたであることを「かわいい」と言ってもらったことで

「あぁ、そんなふうに思う人もいるんだなあ」と知ったことが、

一重まぶたで悩まなかった理由のひとつにあるように思う。

ラッキーだったね。わたしよ。

 

KPOPブームのおかげかわからないけれど、

ここのところよく一重まぶたを活かすメイクなんかを

ネットの記事や動画でよく目にするようになった。

けれども、モデルは韓国の美男美女のアイドルたち。マネできるかい!

ほかのパーツが違いすぎるぞ!と毎回思うのでした。

 

***

 

村上さんの生の声を、直接会場で、長く聞いたことで、

そのあとに作品を読むと、どの作品も村上さんの声で

再生されるんだなあ。作品の中でよくあるシーンのときには、

勝手に、ちょっと気まずい。「夏帆」の物語にはありませんでしたよ。

 

余談ですが、娘が生まれたら「夏帆」とつけようと思った。

予定はまったくありませんが。(しかも、娘が生まれる前提)

村上さんの何かの作品で、「白のフォレスター」が出てきたときに、

「次に乗る車は白のフォレスターだ!」と決めていたのだけれども、

その意思は簡単にゆらぎ、いま乗っている車は黒のインプレッサ

共通点はスバルだけ。なんであの作品に出てきたのは

白のフォレスターだったんだろう?黒のインプレッサもぜひ登場させてくれませんか。